【あんなぁ よおぅききや】NO.06 お火焚さん
問屋町通には昔、太閤秀吉が京の大仏、方廣寺を建立する際に
高野山より招いた高僧木喰応(もくじきおう)其(ご)上人(しょうにん)が
庵を構えて住んでいました。だから今も上人町と呼ばれています。
魚市場の時代に、町の守り神をお祀りしようと、
氏神さんのお稲荷さんと市姫さんを祀る立派なお社をつくり、
今も町内の人々でお守りをしています。
春の初午祭や秋のお火焚き祭は、町内の人が集まってお飾りをして、
護摩木を焚き、商売繁盛や家内安全などの祈願をする習わしです。
「今日は町内のお火焚きさんやから、おまえお手伝いに行っといでや」
「中学生なんか、誰も手伝いに行ってへんし、そんなん行ったって、わからへんやん」
「誰でも初めからわからへん。手伝うてるうちに、だんだん覚えていくもんや。
最初は、他人がしたはるのをよう見て、自分に出来ることを手伝うてたらええのや。
わからんことは聞いたらええ。何したらええのかわからんからいうて、
ボケーと立ってたらあかんぇ。できるかできひんかは別や。
できることからしたらええ。結果はどうであれ、やってみることや。
失敗を怖がって手を出さんようでは、何もできひんようになるのや。
それでもわからんかったら、他人のしはった後片付けばっかりしてたかて、
そのうちに、今は何をせんならんかすぐ覚えられるようになる。」
「・・・・・」
「どうやったんや、お火焚きさん。お手伝いできたか?」
「うん、まあまあや」
「おまえもこれからだんだんと大きなったら、
町内の役や麸屋の組合の役もせんならん。
いろんなところから役を持ってきはるようになる。
他人の世話は、言われたらちゃんとせんとあかんぇ」
「へぇ、そんなん、せんならんのか」
「そうや、せんならん。あんなぁ よおうききや
役を引き受けたら、まず一番の仕事は出席することや。
出席しているうちにどんなことをするのか、ようわかるようになる。
自分の得になるような時だけ出席して、損になる思うたら欠席する人やら、
ごちそうが出る時だけ出席して、働(うご)かんならん時は欠席する人もあるけど、
そんなずるいことは絶対にしたらあかんぇ」
「へぇ、狡い人やなぁ」
「そうや、そんな狡い人は他人が信用せえへん。
役を頼まれて、いったん引き受けたら、とにかく一生懸命することや。
この役はできひんと思うたら、相手さんに初めから、
はっきりと丁重にお断りするのや。迷惑がかかるさかいにな。・・・・(続く)」
合掌