お辨當箱博物館について
伝統的な食文化の素晴らしさを後世まで広く伝えたいという願いから、
半兵衛麸本店の京町家では「お辨當箱(べんとうばこ) 博物館」として古いお弁当箱を多数展示しております。
ご見学は無料ですので、お買い物のついでに、ご自由にご覧ください。(開館時間 10:00~17:00 入館は16:30迄)
(京都市内博物館施設連絡協議会にて正式に博物館登録していただいております)
お弁当箱について
食の文化をこれからも
日本には四季があり、その季節ごとに自然の美しさ、厳しさ、輝きを感じながらさまざまな文化を育んできました。
食でも料理の技だけでなく、食材や器、しつらえに、この“四季”を大切にして、
技の折りなす美しさと粋(すい)を楽しんできました。
しかし、日本古来より培われてきたことが失われつつある今、
次代に継ぐには、これまでの技を愛でることで何かを感じ、何かが変わるのではないかと思っております。
ここで、食に対するいにしえの人の想いに少しだけふれていただければと思います。
食事を楽しむ
「食事は、生命を維持するための栄養摂取の手段だけではない。それでは餌である」
人間は餌を食べるのではなく、“食事”を“食文化”という文化として大切にしてきました。
だからこそ、何を食べるか、どう料理して食べるか、どんな器にどんな盛り付けにするか、
どんな場所で誰と食べるかと考える楽しみまでを含めて、食事ととらえています。
だから、たまにはお弁当をもって、家族や友人と出掛けて、
野や山、川や海、満開の桜の下での食事を楽しみたいと思うのでしょう。
美意識ともったいない
お辨當箱博物館では、主に屋外での食器・酒器を展示しています。
単に屋外へ食べ物を運ぶための箱ではなく、どれも季節や趣向に合わせた職人の遊び心や技を利かせたお弁当箱です。
お花見には螺鈿で桜の花びらを散らして、夏には風通しのよい素材で涼しげに、船遊びには船型など、
贅を尽くした蒔絵や螺鈿の細工は、美術的にも、技術的にも優れています。
普段使いには、持ち運びに便利な工夫が施されたお弁当、お箸、茶器は、参考にしたいものです。
長く使うことを前提に、作りも丁寧ですが、使った後の手入れも行き届いており、百年以上経った今も、当時の美しさを保っています。
海外でのBENTO
「BENTO」は日本以外の国でもつかわれている言葉だと聞きます。
特にニューヨークやパリでは、使い捨て容器に、簡単に調理された食材を詰め販売されているものを指しているようです。
ビジネスマンが、時間がない時にお腹を満たすために取る食事「BENTO」を買い求めます。
日本にも同様の「おべんとう」屋さんはたくさん存在していますが、
この「BENTO」「おべんとう」だけが日本のお弁当ではないことを、
お弁当にも文化があることを海外の方にも知っていただきたいと思っています。
食文化の伝承
今の世は、年中通してどんな食材も簡単に手に入るようになりました。
器もプラスチックの安価で使い捨てのものが多く出回っています。
私たちはこうした便利と引き換えに、自然を感じたり四季を愛でること、土の温かさや木のぬくもりに触れること、
ものを大切に使う気持ちに鈍感になってしまったのかもしれません。
私どもの生業は、330余年続く「麸屋」でございます。
「麸屋がなぜ博物館?」なのですが、食の文化を伝承していきたいという思いでご紹介させていただいております。
お客様である多くのお料理人さんが、素材にこだわり、季節を取り入れたお料理をつくられ、
器に凝って、京料理を守っておられています。
私どもも京麸を通じてそのお手伝いをさせていただいております。
みなさまのふだんの食事の中でも、京麸をお使いいただく以外に、
食を楽しむ、文化に触れるお手伝いがもう少しできればと思い、
お辨當箱博物館を開館しました。
食の文化の一端に触れていただき、生活の中に少しでも取り入れていただければ嬉しく思います。