半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.29 ただいま、おおきに

表で遊んでいると、いつも近所のおばさんから
「はい、おやつあげよ」
と半紙に包んだお菓子をもらいました。
その場で開けて食べたいのを我慢し、家に帰り、両親に見せてから食べないと、
行儀が悪いと叱られました。

「『ただいまは、おおきに』言うといで」と言われ、お菓子をもらった家へ
「ただいまは、おおきに」と言いに行ってから、やっと食べられました。

「ただいまは、おおきに言うてきたか?」
「うん、言うてきた」
「どんな風に言うてきたか、もう一回ここでやってみ」
「ただいまは、おおきに」
「へぇ、そんな言い方ではあかんがな。人に物をもろているのに、頭の下げ方がなってへんやろ。
おやつもろてうれしないのか?」
「そらうれしい」
「今、うれしいと思うてる気持ちが、相手に伝わらんような言い方ではあかんがな」
「……」
「ほんまにうれしい気持ちが無いからや。

ご飯を食べる前に『いただきます』、ご飯を食べ終わったら『ごちそうさまでした』て言うやろ。
仏様やご先祖さんのお陰と、お母さんが、お膳の上にご飯の用意をしてくれたから、
感謝して『いただきます』、おなかがふくれ、おいしかった、有難かったから、『ごちそうさまでした』と言うのやろ。
食べ始めます…『いただきます』、食べ終わりましたよ…『ごちそうさま』の合図でいつも言うてるのんか。

あんなぁ よおぅききや

隣のおばさんも、昔からの長いお付き合いや。おまえを自分の子供と同じように思たはるのや。
おまえをかわいいとおもたはるさかいに、おやつをくれはったんや。
おばさんからも、お母さんからも、もらえへんで、今日のおやつが無かったと思うたら、
おやつをもろたのがもっとうれしいやろ。
一回言うたのに恥ずかしいやろうけど、もう一回ちゃんと頭を下げて、丁寧に『ただいまは、おおきに』言うといで。
おばさんも喜ばはるわ」


合掌