半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.27 ご縁【前編】

お葬式用の黒い着物を着て父が帰ってきました。
「大勢の人で立派なお葬式やった。亡くならはった人は大した人やったんやなぁ」
翌日、大きな菓子箱を持った方が大勢で来られました。

「誰ぇ?」
「いや、実は4、5日前に表を歩いてはったお祖父さんが、フラフラして頭を押さえて、
うちの床几(しょうぎ:簡易用の腰掛台)に腰掛けていはるのや。
どうもその様子がおかしいな思うて声掛けたら、
 『頭が痛うて、胸がキューと締めつけられて』て言わはるので、
普通の様子やないと思うて、すぐに表の間にお布団を敷いて寝かしてあげたんや。
家の電話番号を聞いて連絡しているうちに、もう動かへんようになってしまわはった。
家の人が慌てて来はって、すぐに車を呼んでそっと連れて帰らはったんや。
それで、今日、お礼に見えたんや。」

「へぇ、うちで死なはったんか」
「前田さんいうて、大きな商売をしたはる人やそうな。
もし道端で倒れてたら、警察が来て、行き倒れの人にはどんな人でもムシロに寝かせて、ゴザを掛けはるのや。
『死に目に会えなかって悲しいけど、畳の上で布団の上で死なせてもらえた。
見ず知らずに人に親切にしてもろうて、こんなうれしいことはありません』と息子さんと奥さんがお礼に来はったんや。

あんなぁ よおぅききや

人間は、どこでご縁があるのかわからんのや。
不思議なもんなんや。

ひょっとしたら、うちのご先祖さんが、道中で腹痛を起こして、旅人からお薬をもろて、
その人が前田さんのご先祖かもわからん。
助けてもろたご縁が、今お礼できたのかもしれんのや。

おまえもうちのご先祖さんがちゃんとしていてくれはったお陰で、いろんな人から良いご縁をいただいて
生きていけるのを感謝せんとあかんのや。

自分の子孫が良いご縁をいただけるようにしてやろうと思うたら、他人さまに、生きている間に親切に、
良いご縁をつくって残しておかなあかんのや。」
「貯金やなぁ」
「そうや、ご縁の貯金や。そんなご縁の関係がどうなるか、長生きして見届けられたら面白いけど、
先のことがわからんから良いのかもしらん。

人間自分一人の力なんてしれたもんや。
みんな他人さまの力、他人さまとのご縁で生きさせてもろてるのを忘れたらあかん。
お父さんも 『他人の為に尽くせ、他人の為に生きろ』 といつも言うているけど、
内心は自分の為になるように、心のどこかで思っているのや。
それは自分の為だけやのうて、子孫の為になるようにと思うのも、結局自分の為になって欲しい
と思っているのと同じなんや。

他人の為というけど 、『 人の為・ 偽 』 という字になるやろ。
人の為とは、偽りで本当はみんな自分の為なんや」

【後編へつづく】