半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.23 うそやろ

「お父さん、あの人何したはるのん」

三条大橋を西に渡っていると東詰めに、大きな男の人が座って、
手をついている銅像が見えました。

「あの人は高山彦九郎や。御所の方を拝んではるのや。」
「へぇー、なんで?」
「高山彦九郎は、江戸時代の終わりの人で、普通の人はその日暮らしの質素な生活をしていた時代のことや。
農村の人は年貢の取り立てが厳しくて、自分の作ったお米も食べられへんのや。
全部取られてしまうから、ヒエやアワしか食べられへん。

そんな時に飢饉が続いたんや。作物が取れへん年が続いたんや。
ひどい人は蓄えの食べ物も無くなって、草、花、動物、虫はもちろん、
食べられるもんは何でも食べたんや。

この間の戦争後の食糧不足よりももっとひどくて、
とうとう松の根っこを掘って食べたり、藁を石で叩いて柔らかくして炊いて食べたくらいや。
少ない食べ物をちょっとでも若い人に食べさせなあかんから、年寄を山に捨てに行ったんや。
『姨捨山』の話や。

何も食べるものがなくなって餓死する人がいっぱい出たんや。
そのガリガリになって死んだ人の肉や脳みそまで食べるような人もおったんや」

「うそやん」
「うそと違う。ほんまの話や。外国の話やあらへん、日本のつい200年前のお話しや。怖い話やろ」
「そんなら、人食い人種やん」
「うそやない、その姿を見てきたのが高山彦九郎なんや。
『北方日記』ていう本に書いてある。

彦九郎は、これは普通やない、この世の地獄や、
これは年貢を厳しく取り立てる幕府が悪いからやとお城に言いに行くと、
お城の中では飲めや歌えの贅沢三昧。

酒飲み競争、大食い競争、食べることを遊びにしていたのや。」
「なんで困っている人に分けてあげへんの」
「自分さえええ人が世の中にはいるのや。

そこで彦九郎が、このままでは日本が滅びる思うて、幕府を倒して天皇を立てようと
京都三条大橋まで来はったんや。
そして、御所を見たら土塀も崩れ、家が傾いていたんや。

『あぁ、おいたわしや』と涙を流し、勤王の士になったんや。
その像がこれなんや。

着るものは、寒ささえ凌げたら何とか生きられる。住むところも寝られたらええ。
食べるのはなかったら死んでしまう。
食べ物の有難さを忘れてしまうが、食べ物をおろそかにしたらあかんのや」

あんなぁ よおぅききや

「食べ物を玩具にしたらあかん。
ましてや他人のモノを取ってまで贅沢するのやあらへん。
これからは他人に喜んでもらえる食を考えなあかんのや。
みんながいつまでも平等に食べられるような世の中でないとあかんのや。

彦九郎のような人がいはったから、今日があるのを忘れたらあかんぇ、
日本人がついこの間、人間の肉を食べてたいうても、誰も本気にせぇへんけど、
これはほんまにあった話や。」


合掌