半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.20 大掃除

「衛生掃除」こんな言葉は、今日では死語となりました。

昔は、学区や町内が一斉に家中を掃除する日がありました。
町内が一斉にするから埃を立ててもご近所迷惑にならず、家族だけではできない家は
親戚や知人の手伝いを得て、大掃除の後は清々しい気分で気持ちがよかったものです。

朝から家中の畳を上げて表通りに出しお日さんに当てます。
床板をはずし風を入れて湿気を取ります。
台所のススを落として、天井を拭いて、畳を元通りに入れます。

畳が干してある横の地べたにゴザを敷いて、お昼ご飯を食べていた時でした。

「畳にお日さんが当たってるか?」
「うん、よーぅ当たってる」
「今日は良い天気やからな。いっぺんひっくり返して裏にもお日さん当てたいくらいやなぁ」
「・・・」
「お日さんの当たってるとこは、よぅ乾くやろ。裏の方はまだ湿気てるみたいやなぁ。
よぅ見てみ、日がよぅ当たってるところがある分だけ、当たらん陰のところががあるやろ。
表があったら、それと同じだけ裏があるのや。

「そらそうやん」
「そらそうやんてで、何でも当たり前と、簡単に片づけてしもたらあかんがな。
お日さんが当たらん陰の方かて、いっぺんお日さんに当たりたいなぁ、と本心は思うてるかもしれんのや。
この陰は、お日さんに当たりたいけど辛抱しているのや。

『まぁええわ、私はお日さんに当たらんでも、私さえ辛抱してたら反対側はお日さんに当たって、
ポカポカと気持ち良う楽しんで、きれいにならはるのやさかいに、私は犠牲になったげたらええわ』と思うてるのや。
お日さんの当たってる方は、お日さんはみんなに当たってると思うて、陰のあるのを知らなかったり、
私は偉いからお日さんに当たっているのや、とか思うたらあかんのや。

自分が気持ちの良い分は、誰かが気分悪うても、辛抱してくれる人がいはる。
それをよう知ってんとあかんのや。
そんな陰でご苦労されて、辛抱してはる人がいはるさかい、自分は良え目にあっているから、
感謝する時に『お陰さんで』と言うのや。

『どうです。大掃除片付きましたか?』
『へぇ、お陰さんで』は、陰で一生懸命働いてくれた人によって片付き、きれいに光りました、
ていう意味や。わかったか?」

「お陰さんで」
「ワハハ、お父さんも言うた甲斐あるわ。

あんなぁ よおぅききや

自分が光っている時は、陰に回っている人に感謝して、ねぎらわなあかん。
時には自分が陰に回って、他人さまに光ってもらわなあかんのや。
『お陰さんで』と、感謝の気持ちが言えるようにならんとあかんし、
『お陰さんで』と、感謝してもらえるような人にならなあかんのや。わかったか。

さぁ、一服もしたし、あとひときばり。畳をひっくり返して掃除早よ済まそうか」


合掌