半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.18 他人の仕事

小学校から帰りには、近所のいろんなお仕事をしている様子をじっと見ていたものです。

鋳掛けやさんは、鍋に開いた穴にビスを差し、両側から少しずつコンコンと打って、
穴をふさいでまた使えるように修理します。

こうもり傘の骨が折れたのを直す仕事もありました。

別の人は、ピーとなる釜のついた手押し車で、煙草のきせるの羅宇(竹の部分)を燃やして、
新しいのに替える仕事をしながら町の中を回っています。

トユ屋さんの店先では、硬いブリキ板をまるでボール紙のように簡単に、
ちょっとまがったハサミで切って、少しずつ丸めて立て樋(とい)を作るのが見られます。

違うお店では、大きな木の塊をノミで少しずつ削って、お寺で使う大きな木魚の形が、
だんだんとできていくのが楽しみで、毎日見ていました。
削りカスの良い香りが、プーンとしていたのをまだ覚えています。

神様の小さいお社の杉皮の屋根が、真っすぐきれいに葺けるのは、杉皮を並べるときに、
糸を張って目印をしてあるからだと興味深く見ていました。

他人がしている仕事は、自分に責任がないから、見ていても飽きず、面白かったものです。
こうして幼い頃に見ていたことが、今日の物作りの参考になったりしている気がします。

「この間、道で下駄の鼻緒が切れた時、下駄屋のおっちゃんがしたはるのを覚えてて、自分で直せた」
「他人のしていることもよう見てると、いろんなことの参考になるのや。
いざ困った時、いろんなことを知って覚えている者と、ボーッと見てた者と差がつくのんや。
鼻緒が切れたままやったら、裸足で帰らなあかんかったやろ」
「うん、よかった」

「あんなぁ よおうききや

仕事も何事もいっぺんにはできひん。一つ一つ覚えていくのや。
自分のすることだけやのうて、何でも知ってて損することはないんや。

鼻緒が切れて困ってる人がいて、直してあげたら喜ばはるやろ。
これも他人のためになることや。

こんなもんしょうもないと思うたら、もうそこで終わりや。
少しずつ物事を知り、覚えることが大切なんや。
他人のしたはるのをよう覚えときや、いつかは役に立つさかいになぁ」


合掌