半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.17 弘法さん

京都では、毎月21日は東寺(弘法さん)へ、25日は北野天満宮(天神さん)にお参りに行きます。

「これから弘法さんに連れたげようか。その代り何にも買わへんぇ」

東寺さんの境内は、食べ物から、玩具、古道具、古着に至るまで、
たくさんの露店が出て大変にぎやかです。

まず、お線香をあげて御本堂を拝み、次に小さいお堂を拝んで回ります。
特に一月の初弘法や十二月の終い弘法の日は、お参りの人が多く、
拝んでいても押されてふらつくくらいです。

「お父さん、下駄の鼻緒が切れた」
「えらいこっちゃ。どうしようもないなぁ。しばらくそのまま裸足で歩いとき」
「足が冷とうなってきた」
「しゃあないなぁ。手拭いあるさかいに、これで足と下駄をくくっとこうか」

カッタンコットンして歩きにくかったけれど、裸足よりはましでした。


「ぼん、鼻緒切れたんか。こっち貸し、直したげよ」

古道具を売っているおじさんが、手拭いをビリビリッと裂き切って
売っている道具を使って直してくれました。

「さぁ、これでええ。履いてみ」
「おおきに。やっぱし歩きやすいわ」
「助かったな、直してもろて。なんぼ言うても、お礼も取らはらへんかったなぁ」
「他人が困っているのを見て、すぐに直してくれはった良えひとやったな。
見習わなあかんなぁ。

おまえが賢うに拝んでいたさかいに、弘法さんが助けてくれはったんや。
こうしてお寺にいはる人は、売ったはる人も、来たはる人も、みんな良え人ばっかりや。

あんなぁ よおうききや

昔から、『寺の内、会う人会う人、みな仏』

お寺の中に入ったら、誰でも仏様みたいな気持ちに自然となるのんや。
手を合わして拝んでいるうちに、心が洗われてみんな善人になるのんや。
これがまた、お寺の良えとこなんや。

お寺の中だけやのうて、いつの場合にでも、目の前にいはるこの人に、
自分は『今、何をしてあげられるか』を考えんとあかんぇ。
『後でする』は、もう遅うて役に立たんこともあるさかいにな。

さっきもそうやろ。
鼻緒が切れて困っている時に、すぐに直してくれはった。
明日直したげるでは遅いし、役に立たんやろ。

そういうこっちゃ。
自分が困ったときに助けてもろうたら、おまえもその有難味がようわかるやろ。
今日の弘法さんは、ええ勉強させてもろたなぁ。
ええご利益をもろうたなぁ」


合掌