半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.15 先人の心

「自信の持てへん物、不出来な物、
『京都から出荷できひん物=京都から下らすことができない物』 を 『下らん物』 と言う。

不出来で自信の持てない物は気がとがめて、箱に詰めることができんから、
『詰められない物』 を 『詰まらない物』 と言うのや。

茶碗が少しゆがんだり、ちょっと欠けているくらいならよいが、
二つに割れていたり、食べ物の形が悪いだけやのうて、腐って食べられないような
『どうすることもできない物=どう仕様もない物』 を 『しょうもない物』 と言うのや。

上手にごまかして売ったらよう儲かって、その時は徳をしたように思うけど、
ごまかして売って1回や2回は通っても、そんな商いの仕方は長続きせえへん。
上手にごまかして売ることができる人を 『ええ商売人や』 と言う人もいるけど、とんでもないことや。
信用をいっぺんにおとしてしまう。

京都の人間は、毎日の生活も、物をつくるにしても、歴史を大切にして文化度が高く、技術も一番や。
京都でええかげんな物をつくる者は軽蔑されたり、他人さんに相手にしてもらえない土地柄や。
どの道の先輩も高度な技術を習得して、もっと良え物を、みんなに喜んでもらえる物を作ろうと思うて、
良え物作りを目指し、寝食を忘れてどうしたらいいかを考えて、毎日研究し、腕を磨いてきたんや。
そして長い間かかって 『さすが、何でも京都の物は良え物や』 と言われるようになったんや。

材料を選び、手抜きをせず、手間を惜しまず、と心をこめて作ったから、京都の物は良いといわれるのや。
これは長い間、京都の町衆みんながつくってきた信用で、京都の大きな財産や。
ちょっとでも出来が悪かったり、傷物やったりして、自信の持てない物は京都人の誇りとして、
京都から外へは出してはあかん、
『自分とこの商売の信用やのうて、京都のすべての人の技術や商いにも迷惑がかかる』
という気質が、昔から京都人にあったから、

『自分で自信の持てないような商品を京都から外へ出荷しない』
これが、京の町衆みんなの心意気なんや。

あんなぁ よおぅききや

売りものはよう見て 『下らん物』 『詰まらん物』 『しょうもない物』 は、うちから絶対出したらあかん。
『やっぱり麸の味が違う。美味しいなぁ』 と言われ、誉められて、
長い間商いをしてきたうちのご先祖さんや 『京都の物は良え物や』 と言われてきた、
昔の京都の町衆の皆さんに申し訳が立たんからなぁ」

合掌