半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.12 モロコ釣り

中学生の頃です。
琵琶湖大橋の東側に大湖汽船の木の浜港があり、その近くの水路でモロコがよく釣れました。
でんと腰を下ろし、欲張って一人で3本ほど扇型に竿を出して釣るのです。

モロコの習性か集まって移動しているようで、釣れ出すと一度にどの竿のウキも動き出します。
釣り上げて次の餌をつけていると、また別の竿も釣れています。
田植え前の田んぼで遊んでいる子供たちに、

「その竿釣れてるし、上げて!」と頼むと、2、3人で釣っては新しく餌をつけ、また釣って、
どんどん釣り上げ手伝ってくれました。
見ている間に魚籠の中はモロコでいっぱいになり、

「おおきに、助かった。みんな魚釣りは好きか?」
「うん」
「そんなら、なんで魚釣りせぇへんのや?」
「道具ないもん。買うてくれへんもん」
「そうか、もし欲しかったら、その道具入れにたくさん入ってるし、
手伝うてくれたお礼に、好きなん持って行ってええわ」
「うぁ~、お兄ちゃんホンマかもろてえのんか?」とみんな大喜び。
夕方になると、桟橋まで送ってくれます。

次の日曜日、子供たちとの約束通り釣りに出掛けました。
私も欲が深いもので、竿を10本ほどと魚籠を3つも持ち、木の浜港に着いたら、
前よりも大勢の男の子が待ってくれていました。

「魚釣りを手伝うたら、お兄ちゃんが道具をくれると学校で話したら、みんな集まってきた。」
とのことで、大勢で順番に釣りを楽しみ、その日も持ち切れないほどの魚を持ちかえりました。
あまりにも多く、家で食べきれないほどで、良いモロコは向かいの山内のおじさんに持っていき、
雑魚は家で一週間のおかずにしました。

 山内さんのお商売は昔から釣り道具の問屋さんで、使えるけど売り物にはならない道具が、
 箱の中にたくさん入っていました。
 
おじさんは、私がモロコを持っていくと、いつも「好きなだけ持っていきや」といって
売れない道具をくれるので、私もモロコと交換のつもりで遠慮なくもらっていきます。

売れない道具でモロコをもらえるおじさんは喜び、道具を買ってもらえない子供は手伝ったら
もらえると大喜び、他人にあげた後、まだ残ったたくさんの魚を食べられると家族も喜んでいました。

「みんなが喜んでいて、誰も損をしていない。誰も嫌がっていないのがええなぁ。
けどなぁ、山内のおじさんから道具をもらえんようになったらもう終わり。
木の浜の子が手伝ってくれんかったら、これも終わり。
何かが掛けたら良えことでも終わりや。

 けど、これをどうして長く続けていくかを考えなあかんのや。
『三者皆良し』『三者皆協力』が大切なんや。
他人を喜ばせて、自分も喜ぶ。
それで泣く人がいなかったら最高や。

あんなぁ よおうききや

商売人は『三者皆良し』ここが一番大切なとこや。
お金儲けだけが目的やない。
他人に喜んでもらう、他人さまのお役に立つことが商人の道や。
お客さまにも喜んでもらい、働く人も喜んでもらい、そして自分も喜ぶ。
いつの時代もこの商いの根本を忘れたらあかんのや」


合掌