半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.11 通知簿

明日から夏休み、うれしいけれど通知簿が気になります。
先生が順番に名前を呼び手渡されます。
友達に隠しながら、両手で少しずつそっと開けてみました。

「あ~、よかった。これなら家に持って帰っても見られても、怒られへん。」

当時、成績はよい方から『優』『良上』『良』『良下』『可』と5段階になっていました。

「誰でも『優』が欲しいやろ。この優は『憂(うれい)』の字と『人』が組んであるのや。
憂は心配するて言うことや。
だから、人を心配する=人の事を心配するという意味で優の字になるのや。
人のことを心配する人やから『優(やさ)しい』とも読むのや。
そんな優しい人は『優(すぐ)れている人』なんや。漢字は上手いことできたあるやろ。

学校の通知簿は、授業中答えられたり、試験の点数やら、走りが早かったりで
優やら可がつけてあるけどな、大人になったら、世間にも通知簿はあるのや」

「へぇ、大人にも通知簿があるの」
「そうや、世間の通知簿は厳しいぇ、『あの人は口ばっかり達者で何の役にも立たん人や』とか、
『口では良いこと言わはるけど、実際ええ加減なことばっかりしてはる』て言われるような可ではあかん。

『何さしてもあかんなぁ、他人と同じだけのことができひん』『何さしても、ろくなことあらへん』の
良下をもろてるのでは困るやろ。
せめて人と同じだけのことができるか、他人よりちょっとましなことができるようになりたいし、
せめて平均の良にはならなあかんのや。

『あの人に頼んどいたら、ちゃんとしてくれはる』『あの人に任せといたら間違いないわ、
やっぱりようできはるなぁ』の良上にはならなあかんのや。

 けど、誰でもやっぱり優が欲しいやろ。どんなことでもきちんと物事ができて、何をさしても率(そつ)(無駄)がなく、
 どんな相談されても応えられ、他人から信用される、それだけではまだあかんのや。

大人の社会で優をもらおうと思うたら、他人に優しい人にならなあかんのや。
優しい心で優しい声が掛けられる。他人のことも、自分のことのように心配してあげられる人にならなあかんのや。
そんな人が優れているのや。
困っている人には一緒に心配してあげ、悲しんでいる人には、一緒に悲しみを味わい、
一緒に泣いてあげられるような、優しい心の人にならなあかんのや。

これは人にだけやないぇ。ほかの動物や花にも優しい気持ちを持っている人だけに、
世間の通知簿は『優』のハンコを押してくれはるのや。」

「へぇ、どこで見てはるんやろ」
「世間の人はよう知ったはるのや。学校の成績は、次に頑張って良い点数を取ったらすぐに優になるけど、
世間では一度でも可を付けられたらなかなか取り戻せへんのや。

世間で良下や可を盗らんようにと思うたら、悪いことをせんように気ぃつけて、
真面目にして、生意気なことを言わんと、自慢せんようにせなあかん。

あんなぁ よおぅききや

世間から、良い評価をしてもらうためにするのやないぇ、いつも優しい気持ちを持って、
自分に正直に生きてこそ『優』なんや、忘れたらあかんぇ」


合掌