半兵衛麸のこと
半兵衛麸のこと

あんなぁよおぅききや

NO.09 鴨川のゴリ

「今夜は暑いなぁ。橋の上へ涼みに行こうか」

父に誘われ、五条大橋へ涼風にあたりに行きました。
今日と違い、クーラーはもちろん、ほとんどの家に扇風機もありませんでした。
毎晩のように停電ばかりで、扇風機があっても用をなさない時代でした。
家に居ても停電で暗く、外の方がお月さんの光で明るく、暑い家より
橋の上の方が川風があり、涼しく気持ち良く夕涼みには最高でした。

「一番星みーつけた!」お星さんが出てくるのを、一つずつ見つけていました。
「なぁ、下見てみ。川が流れているやろ。今、ゴリ(魚)が尾っぽを一生懸命振って、
石の下に穴を掘って、棲みかをつくっているのや。
砂をのけるのも頭と尾っぽを動かして、小石をのけるのやから大変な苦労や。
夕立で大水が出たら、石は簡単にひっくり返って、せっかく掘った穴も
あかんようになる。
大水が来る前に大きな岩の下に逃げんと、ゴリ自身が流されてしまう。
それを知らんと、ゴリは穴掘りを続けるのや。

ゴリと同じように人間も、一生懸命仕事をすることも大切やが、水で流されたら何もならん。
商いもこれと一緒で、仕事をすることは大事やが、今の状況をよう知ることが大切や。
ゴリの穴掘りと同じように、大水が来るのをわからんではあかん。
無駄な動きをせんように、状況をよう見て早く対処し、すぐに行動に移す。
それで効率の良え仕事をするようでないと、世の中の動きに立ち遅れてしまう。

情報が正しいか、間違っているか、するかしないかの判断をする時に
『ものさし』がいるのや。
長さを測るには『物差し』 時間は『時計』 温度は『温度計』 
その時その時に、いろんなハカリがあるのと同じように、人間の心の中にいろんな
ハカリを持っているのや。

このハカリが狂ていたらあかん。正しいのでないとあかん。
心の中のハカリが真っすぐな正しいものやったら、悪い事や、間違うた事も、
騙そうとしている人もすぐわかるのや。

それから、これからの世の中がどう変わっていくか、自分はどんな立場に
いるのか、自分は今どんな状況のところにいるのか、足元をよう見なあかん。
お客さまが欲しがっていないものを懸命に作り続けているのではあかん。

『私は一生懸命に仕事をしているからそれで良いのや』と思うていても、
無駄なことばかり、独り善がりのことをしている場合もあるのや。

あんなぁ よおぅききや

商売をするようになったら、『今どんな状況か、どんな世の中か。
これからどう変わるのか。お客さまは今、何を、どんな物を欲しがっているのか。
お客さまに喜んでもらうにはどうしたらええのか』を絶えず考えてんとあかんのや。

黙って一生懸命働いていたら良いっていう時代はもう済んだ。
同じ働くにも、無駄のない働きをせんとあかんのや。自分だけでなくて、
人にも知らして挙げるくらいの度量と、判断のために正しいものさしを持たんとあかんぇ。


合掌